34.火竜を討伐する?

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「アルル、吟遊詩人ってなんなの? おかしいよ、あんなことできるなんて」

コンスの顔は真剣そのものだ。アルルは、カリュのお屋敷の一室のベッドの上に腰掛けていた。

「うっ……禁則事項です……」

ちょっと某アニメの未来からきた癒し系キャラの代表セリフを言ったくらい許してほしい。

「は?」

マジで意味わかんないって顔、結構傷つくのでやめほしい、コンスくん。アルルも大変な立場にいるようだよ、なんせ禁則事項だからね。

「言えない。言ったら旅を続けられなくなっちゃう」

「ていっ」

ゲイルがコンスの額にでこぴんを入れた。拳闘士のゲイルの拳はかなりの威力だ。

「げふっ」

つんのめって後ろから倒れた。

「コ~ン~ス~、心配~な~のは~わ~か~る~け~ど~ア~ル~ル~には~休息~が~必要~よ~」

マールがアルルの肩に手を回して支える。アルルの顔は真っ青だった。

「いつか話してくれるであるか?」

ヘルンがアルルの手をとってアルルと目の高さを合わせて言う。さすが、教鞭をとっているだけある。バイトだが。

「うん、その時がきたら」

もしかして、それがボクの旅の終わりの時かもしれないとアルルはつぶやいた。

「話は終わったか?」

カリュが興味深い顔そうな顔をしてみていた。

「終わっていましたよ」

コンスが俯いたまま言う。頭の後ろにはたんこぶができているだろう。アルルを残して別の部屋に移った。

「人間は理解できないと思っていたが、クレアが現れ、お主等のような全員が秘密を抱えてるような面白い人間達にも会える。長生きするもんじゃな」

愉快そうに笑っていた。

「僕らは、どうすべきなんでしょうか」

コンスは憔悴していた。明らかに気落ちしている。

「本来すべきことなど、この世にはない。だからこそ、自分がやらなければならないことをするしかないのじゃよ。あがけ、若者よ。悩め、苦しめ。わしに問うのは筋違いじゃよ」

人間、というのは少々違う五人だがな、とカリュは付け足した。

「ダーリン、倒されたことにするの?」

「ああ、この人型の道楽貴族として生きていけば問題なかろう。クレアと街で怪しまれず会うために現領主から拝命したが、こんなところで役に立つとは」

火竜とは想像ができないような外見なのだ。線の細い長身な肢体。青というか水色の髪、金色の瞳。カリュは色白の美男子だ。

「シナリオとしては、火竜と恋仲にあった領主の娘は勇者に火竜を討伐されてから意気消沈し、地質調査をしている貴族に慰められ、結婚ってところか?」

ゲイルが珍しく長くしゃべった。

「あの領主に怪しまれずにいられるかがわからんがな。一筋縄ではいかんじゃろう。お腹の子
のこともある」

「クレア、お腹の子はいつぐらいに生まれそうなのだ?」

ヘルンが真っ青な顔をしていた。震えている。何かとてつもないことに気づいてしまったような表情だった。

「わかんないなー、カリュが生命を感じるって言ってるからいるのは間違いないと思うんだけど、全然大きくならないんだよー」

ヘルンはクレアと一緒に部屋の外に出てこそこそ話をしていた。魔法で結界を張っているようだ。

「ヘ~ル~ン~どう~し~た~のか~しら~?」

「わからない。こういう時、妙に物知りのアルルもいないしな。コンスはボーとして使い物にならない」

「な~ん~だか~嫌な~予感~が~す~る~わ~」

マールは深刻そうな顔をしていたが、ゲイルの顔は全く変わらない。元々機械のように無表情で変わる方が珍しい。

「計画は実行でよいのか?」

「アルルの回復と共に、貴方の火竜としての住処で行いましょう。明日以降になると思います」

コンスは、覇気のない声で言った。

「腑抜けとるなよ、勇者」

「どうしてかわからないけど、アルルが吟遊詩人としての能力を使うたび不安になる。アルルが消えてしまいそうで」

「アルルは吟遊詩人なのである! 自身の本分を全うできないことは不幸なことなのである!」

ヘルンが珍しく声を大にして主張していた。

「例えそれがどんな結果になろうともである。それが、力を持ったものの運命で、業なのである」

何故か、ヘルンは泣きそうだった。その視線は、クレアのお腹に注がれていた。マールが気が高ぶったヘルンの肩を抱いて落ち着かせていた。

「今日はゆっくり休み、決行日は明日話し合おうぞ」

「偽物の決戦はまだ少し先だな、マール」

「そ~う~ね~、ゲイ~ル。で~も、私~は~と~ても~嫌~な~予感~が~す~る~の~」

この場は一度、お開きになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 






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