33.領主とクレアの母の恋

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「わしも吟遊詩人から聞いただけじゃが」

アルルがげんなりした感じで話そうとしたカリュを止めた。

「ああ、それならボクが話すよ。その話はどえらいドラマチックに語られてるからね。はじめにいっとくけど、これ、ボクのアレンジじゃないからね。この演出やるの面倒くさいから嫌なんだけど、人気あるんだよねぇ」

アルルの瞳が金色に輝き出す。確かにそこは森の中の道だった。だが、情景が変わる。目に見える形で話が始まったのだ。微かに歌声が聞こえる。この光景は幻覚なのか。心に直接響いてくるような情景だった。

『あんた何してんの?』

そこにいたのは、スラム街で馬が怪我をして立ち往生していた青年だった。少し目つきが悪い。

『君は誰だ?』

『お偉い貴族っぽくみえるけど、礼儀なってなくなーい? 名乗るなら自分からしょ』

ボロボロの服を着ていて、どこもかしこも汚れているが、美しい少女だった。

『私の名はボルグ』

『ふうん? あーしはミシャ。物心ついた頃からここにいんの』

『こんな不衛生な場所に?』

『ボルグって次の領主の名前じゃね? あんたの父親がここを生み出したんじゃね?』

『それは、知らなかった』

『知らなかったって言って自分の罪が消える訳じゃないじゃん!』

『君は頭がいいな』

『あんたは? どうしたいの?』

試すような瞳だった。

『君のような子供が生まれない街にしたいな』

それは、ミシャが満足いく答えだった。

場面が変わる。前領主と現領主だった。

『父上は、この街がこのままでいいと思うのですか?』

『いいも悪いも王都からかけられる関税は重すぎる。拒否すれば、この街は潰される。どうしろというのだ!』

『正攻法では、この街は貧困したままだ』

領主は考えた。彼には妹がいた。

『王都へ嫁に位ってほしい。王の寵愛を。この街を優遇してもらえるように』

彼女は何も言わずに、嫁に行った。元々、嫁に行くことは覚悟していたようで、王ということで、喜んでいた。かなり苛烈な性格だったからか、向上心があったからか、よほど肌に合ったのだろう。正妃の座に収まり、次期王を産んだ。その生活に満足していたようだ。時々、文のやりとりをしていた。

『自分の街以外の物質ルートを潰す』

盗賊を雇ったり、海賊を雇ったりして、この街を通る以外の道を危険にし、使えなくした。

妹のおかげで税の負担も減り、貿易の要にもなり、街は栄えた。

『ダーリン』

美しい笑顔があった。反対を押し切って、領主とスラム街の少女は結婚した。そうして、可愛い娘が一人産まれた。

めでたしめでたし。

「めっちゃ疲れたーーー」

アルルがダウンしていた。

「吟遊詩人~っ~て~す~ご~い~の~ね~! お~疲~れ~様~!」

「本当にすごい。お疲れ」

「何の魔法なのであるか?!」

「ボクに魔法は使えないよ。吟遊詩人はこれが使えないと吟遊詩人とは呼ばないんだけど、ボクは疲れるから好きじゃないんだよね~」

「魔法じゃないのに、幻覚がみせられるのであるか?! 幻影は水魔法なのである! でも、アルルは風使いだから関係してないはず。とにかくすごいのである!」

ヘルンが珍しく興奮していた。それだけ夢みたいな情景だったのだ。

「アルル、それは、本当に使っていい能力なのか?」

コンスの顔はずっと不安そうだった。

「なんで? 吟遊詩人なんだから当たり前じゃん」

アルルの顔色は悪かった。よろけたアルルをコンスが抱きとめた。

「すいません、カリュさん。どこか休む場所はありますか?」

「わしの屋敷が近いな。前に会った時も思ったが、まったく、吟遊詩人というのはわからないな」

 

 

 

 

 






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