30.火竜の街に到着

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「ここが、火竜がいる街?」

アルルは街を見渡した。城壁は低いが活気があり、栄えている印象だった。

「栄えてるし、大きい街だね」

「本当だ。立派な石畳の街だ。火竜に襲われているようには見えない」

ゲイルは興味深そうに街を見ていた。

「城壁が低すぎて、外敵を遮断できないんじゃないか?」

「火竜がいるのに、この街に手を出す馬鹿は、人間にも、ましてや魔族にはおらんのじゃよ」

「誰だ!」

コンスが警戒して叫ぶ。そこには、青い髪の青年がいた。

「この街に何の用じゃ? ワシが案内してやろうか?」

「あなたは誰?」

アルルが聞いた。

「この先の屋敷に住んでいる道楽貴族じゃよ」

青年なのに老人のような喋り方をする男だった。愉快そうに話していた。

「しゃべり方が怪しい」

「何を言うか。この街を襲う火竜の情報がほしいじゃろ?」

「ほしい!」

アルルが間髪入れずに答える。

「じゃあ、ワシと共に来い。悪いようにはせんよ」

「危なくなったら逃げればいいし、暇そうな人に聞くのが一番だもんね!」

アルルが元気いっぱいに言った。だから、青年にその声は届いた。距離があるため、小さな声は届かない。

「失礼じゃな。じゃが、だからこそ、勇者一行といったところか」

「え? なんか言った?」

「何も言っておらん。早く行くぞ」

コンスの剣を一瞥した。

「ふんっ、その剣、不愉快じゃ」

その貴族は、コンスの剣が勇者の剣だと知っているようだった。剣を見て、誰にもわからないように毒づいた。

少し離れた場所にいる五人は、作戦会議のごとく円になっていた。

「めっちゃ怪しいよね」

「いいのか、このまま行って」

「情報収集の一環としてはいいと思うけど」

「あ~ぶ~な~い~か~し~ら~?」

「行っても大丈夫そうである」

「な~ぜ~?」

「敵意がないのである。魔の匂いがするけど、悪い匂いじゃないのである。古臭い気はするのであるが」

「確かに勇者の剣も反応しないし、大丈夫そうだね」

「何の匂い?」

「そこまではわからないのである! 我がわかるのは、魔法の匂いくらいなのである!」

「前途多難だな」

ゲイルがそう言うと、ヘルンはしんぼりした。

「でも、案外物事の核心かもしれないね」

アルルが呑気な声で言う。

「ア~ル~ル~は~達観~し~す~ぎよ~」

「何をしとるか、早く来い!」

「そういえば、貴方の名前は?」

「わしの名はカリュじゃ」

「カリュねぇ~」

「なんだ、最愛の者がつけてくれた大事な名だ。本名は別だがな。馬鹿にすることは許さんぞ」

「馬鹿にはしてないよ」

アルルは呆れたように肩をすくめた。その名には過去に意味があったのだ。偶然にしては出来過ぎている。

カリュの屋敷についた。会食のできる食堂のような場所でお茶とお菓子が振る舞われた。

「単刀直入に言おう。火竜は、この街を壊さない、人に怪我をさせないギリギリのところで暴れとる。じゃが、商売には影響がでとる。商人9oはこの街には寄りつかなくなってしもうた。流通が滞ってる」

「被害~っ~て~そっち~な~の~?」

「街にとっては大被害であろう?」

「実は火竜って頭いいのであるか? 知識のない生き物でないようである!」

カリュは実に愉快そうに笑った。言ったのがヘルンだったからかもしれない。

「さぁてな。火竜の生態など、誰も知らんじゃろう」

「そうだろうな。火竜が好んで人と関わるという記録はない」

ゲイルは少し考え込んで言う。意外そうにカリュは言う。楽しくて仕方がないという態度だった。

「一つ、噂がある。わしは、興味がないからのぉ。良くはしらんが、領主の娘が火竜と恋仲という噂じゃ」

「ろっろっろっロマンス!!!」

「アルル、目の色が変わってる」

「だって、種族を超えたロマンスだよ! めったにないよ!」

アルルの首根っこをコンスが掴んでいた。マタタビを嗅いだ猫と飼い主のようだ。吟遊詩人にとって、ロマンスはその語りの源のようなものだ。

「領主の娘に会おう! 絶対会おう! 話を聞こう!」

誰にも異論はなかった。アルルの勢いに圧倒されているともいう。もう、その場から飛び出しそうな雰囲気だ。

「あ、そういえば、カリュさんは、何の職をなさってる方なんですか?」

コンスが冷静に言った。目に鋭さを含んでいる。

「道楽貴族と言っておろう?」

「貴族には、役割があるはずです。でなければ、貴族を名乗ることを許されない」

「ふんっ、知識がある者というのは面倒じゃ。わしは、このあたり一体の地質調査を任されておる。ほら、お主の仲間が行ってしもうたぞ」

「アルル! ちょっと待って!」

先走って、離れていくアルルの背中をコンス達が追っていく。

「さて、火竜に勇者か……どうなるじゃろうな……」

青い髪と金色の瞳を持つ青年は遠くを見ていた。何億光年先を見通しているようだった。

 

 

 






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