23.レンタル冒険者編Ⅱ(番外編アルミー視点)

最初に断わっておくが、俺達はレンタル冒険者を二人募集しただけで、アルルとコンスを指名したわけじゃない。この二人、結構なポンコツだった。

「アルルです! 職業は吟遊詩人です! でも、風使いとして冒険します!」

「コンスと申します。剣士です。よろしくお願いします」

二人は普通の村人だった。なんなら、その辺にいる人のほうが、よっぽど冒険者っぽい。服装が軽いのだ。鎧も付けてないし、武器はコンスの剣くらいで、アルルにいたってはただの旅人だ。冒険者には見えない。荷物もとても少ない。

「君たち、マジでその格好で旅してるの?」

普通を気にしてるバルトがごく当たり前のことを言う。

「おかしいですか?」

コンスが困ったように眉を下げた。

「いいや、おかしくはない。でも、最低限自分のことは自分でしてもらわないと困るから聞いてるんだ。君たちのこと俺達は知らないから、その軽装でやっていけるのかわからな。足手まといになると、クエストを達成することができないし、俺達の目的でもある”枯れない花”も持って帰ってこれない」

可哀想だとは思ったが、言わなければならないことを俺は言う。

「僕達は、いつもこんな感じです。それで困ったことはありませんが、一度、何か魔物を倒してみますか?」

コンスは、しょんぼりしていたが気を取り直したようだ。きちんとした受け答えをしてくれた。

「そうだね、フォーメーションも確認したいし、近くの魔物を狩りに行こうかね」

姐さん、じゃなくてレティは気が短いので、もう行こうとしている。ガッツがあり、がめつい逞しい女性だ。盗賊だし職業柄もあるのかもしれない。資質の問題は言わないでおこう。怒るとめちゃくちゃ怖いから怒らせてはならない。

「こう見ると、遠距離攻撃者が多いよね」

バルトの発言は最もだ。俺は基本、サポートしかしない。むしろ、戦闘外で役に立つことしか出来ない。戦闘中は、投げて当てる即効性のアイテムしか使えない。爆弾とか爆弾とか。爆弾以外の回復アイテムもあるけど。

「ボクもサポートなんだよなぁ。風を刃にして敵を斬りつけるくらいしか直接攻撃できないもんなぁ~」

ぼんやり言うのは、アルルだ。なんだか、悟っている気がする。達観した後に無邪気さを装っている気がしてならない。昔から実家のアイテム屋にくる冒険者を見ていた。ボケたフリした魔法使いのじいさんと同じ匂いがする。これは、アルルに失礼な例えだったか。つまり、とぼけているけど、本当はわかってるんだ。わかってないフリをしてる。

「何、ぼーとしてるんだ?」

バルトが俺を覗き込んでくる。

「ああ、普通のバルトくん」

「アルミーは、俺のこと慰めていると勘違いしてるけど、全然、貶してるからね」

「そんなことないだろ?」

「そーゆう自覚ないとこがもうだめだよね。まあ、それがアルミーなんだけどね。きっと、後世に名を残すのは、こういう図太い人なんだろうね」

バルトの言うことは、半分くらいは合ってるかもしれないが、半分は当たっていない。そこにいる何の取り柄もなさそうな二人のほうが後世に名を残すことになるからね、たぶん。俺はしがない錬金術師だから。

「な~んか、思考が全然わかんないんだよね、アルミ―は。理解を超えてるっていうか。もう随分一緒に冒険してるんだけどなぁ」

「仕方ないよ、バルト。こいつは、天才型なんだ。じゃなきゃ錬金術師なんて頭が狂った職業できないよ」

「頭が狂ったは酷すぎだろ」

「だってさ、石を金にするだの、そういう研究をしているんだろ?」

「否定はしないけど。できないことを可能にしようとしてるんだろう。賢者の石とかね。とある錬金術師は、大好きなチーズケーキをおいしく作る研究をして、今はチーズケーキ屋やってるよ」

「それだけじゃない、アルミ―自体がちょっとおかしいんだよ。頭はめちゃくちゃいいけど、ネジが一本外れているっていうか。それより、そのチーズケーキ食べてみたいな」

「うん! やばい! そのチーズケーキ屋さんに会ってみたい! 吟遊詩人として!」

今まで、会話に入れなかったアルルだが、錬金術師のチーズケーキ屋ということで興味を持ったようだ。俺と同じように、錬金術師なのに、アホなことしてる人間だ。仲が良かったしな。

「そんなに会いたいなら、クエストが終わったら連れてってやるよ」

この話を魔物と出会うまで歩きながらしている。

「おっと、狼型の魔物か? 群れてるな」

結構な大群で魔物が移動していた。

「作戦は? 誰が立てる?」

バルトがもちろん、お前だろという顔で見てくる。

「ボクとコンスは従った方がよさそうだね」

アルルとコンスが頷き合っている。

「いつも計画は、俺が立ててるから俺でいいよな? レティとコンスは後衛を守ってほしい。防衛ラインを超えないよう魔物を攻撃して留めてくれ。バルトとアルルは遠距離攻撃で死ぬほど射止めてくれよ。俺は基本、見守ってる。時々爆弾投げるから、当たらないでくれ」

「え? 見守ってるってなに?!」

「アイテム士なんて大体待機が基本だ。ほとんど戦闘には参加しないよ」

「なんか攻撃手段はないの?」

「だから、爆弾。気がむいたら投げてやるから。ほら、魔物の群れがこっちくるぞ」

「なんかずるいよ~」

「お前のパーティに回復役はいないのか?」

「いるけど……優しくて、可愛くてきょにゅーうのお姉さんだから許せるけど、なんかアルミーはやだよ」

「アルル、それは差別だろ? んなこと言っていいと思ってんのか?」

「だって、アルミーは偉そうなんだもん」

「アルル、真実は人を傷つけるから。ね、アルミー」

バルトが俺の肩に優しく手を置いてくる。優しい顔と憐れみの目がめっちゃうざい。

「早く倒すよ! そして、チーズケーキ屋に行くんだからね!」

レティの目が怖いぐらいに血走っている。

「いや、レティ、依頼したクエスト終わってからでしょ?」

「チーズケーキ! チーズケーキ! チーズケーキ!」

「聞いてなくて怖いよ~いちチーズケーキのたびに魔物倒してるし」

アルルが泣き出しそうな顔で言う。

「これは、チーズケーキ屋に行くしかないのか……」

俺の顔は真っ青になった。完全に忘れてたんだが、行くって約束した日に忘れて行ってなかったのだ。そんなこと忘れてるぐらい時が経っている。皆が頑張ったおかげで敵は簡単に倒してるし散った。

「さあ、アルミー。行くよな?」

レティが怖すぎて俺は必死に頷いた。

かくして、チーズケーキ屋への旅が始まった。

 

 





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