チーズケーキ屋編(番外編アルミー視点)

「アルミー! 寂しかったんだゾ! 恋人を置いて、こんなに放置してくなんて酷いゾ!」

ゾーイは俺に抱きついてきた。だいぶ久しぶりの訪問だった。チーズケーキを食べたいとレティが本気で俺を脅してきたので、仕方なく連れてきた。錬金術師として苦楽を共にした学友だ。

「いや、前から言ってるけど、俺とお前は恋人じゃないだろ」

「あんなに熱い夜を過ごしたのに!?」

「勉強と研究の徹夜でしか一緒に過ごしたことねぇな」

「アルミーのいけず!」

「お前、そうやって外堀から埋めてこうとすんのやめろよ」

「なんのことだか、わかんないゾ」

ゾーイのこれは、毎回で挨拶みたいなものだから、本気にしない。

「今日は客をつれてきた。イートインできんだろ?」

「え?! 浮気相手?!」

ゾーイの冗談は続いているようだ。

「うーん、男二人と少年?とすると、浮気相手はあの女なのね!」

ゴリゴリ怖い人に指を指した度胸だけは認めよう、ゾーイ。レティ、めっちゃ怒りのオーラだしてんぞ。

「楽しそうなとこ悪いけど、アルミーは全く好みじゃないし、旦那いるし、早くチーズケーキを出しな!」

短気かつ食べたいあまり冗談の通じないレティのイライラが絶頂だ。レティは甘いものに目がないのだ。

「え? レティは旦那さんがいるの?」

「目の前にいるじゃないか」

多少嫌そうな顔をしていたが、アルルの問いにレティは答えた。

「ん? コンス?」

「アルル、このクエストで初めて会ったのに、冗談でもやめてよ」

コンスは本気で怯えている。本気で怖いからだ。

「消去法だとバルト?」

「そうなんだよ。冒険者する前からだから、もう空気だよね」

当たり前のようにバルトは笑っているけど、実は普通にみえて、一番普通じゃないのがバルトなんだよな。あのレティが妻ってだけでただ者のはずない。器がでかいから、多少何言っても怒んないんだよな。だからからかって遊んでるっていうのもあるが。あと、バルトは魔法使いの血族で魔弓使いだ。魔弓の能力で狙ったものは外さない最強の弓使い。ちょっと魔法も使えるらしい。どこが普通だ、って感じだよな。能ある鷹は爪を隠すの典型じゃないか。

「じゃ、アルミーだけ余ってるのか!」

「アルルはすんげぇ失礼だな」

「そんなに褒められても」

「あら、ゾーイという恋人がいるから寂しいわけないわよね?」

「ほら、遊んでないで早くチーズケーキ出せよ、ゾーイ」

「アルミーのイケズ!」

「本当に恋人じゃないの?」

アルルがゾーイにコッソリ聞いてるのが聞こえてくる。

「そうよ。昔からこんなんだから。私はそうなればいいと思ってるんだけどね」

なんかもう、今更本気かわんねーんだよ。俺は聞こえないフリをした。

「私、自慢のチーズケーキをどうゾ!」

ゾーイはいつも通り笑ってケーキを出してくれた。めちゃめちゃ旨いんだ。

「おっおいしい! でも、はじまりの街からちょっと遠いんだよなぁ! 冒険もあるし、足繁く通えないよ!」

アルルが残念そうに言っている。

「テイクアウトできるわよ。今度は、ぜひ、お友達も連れてきてちょうだい」

いつもの笑顔だ。安心する。これがゾーイだ。

「あ、アルミー! ちょっと研究で一緒に考えてほしいことあるの。残ってほしいゾ!」

「その変な喋り方、まだ続けてたのか?」

「アルミーとの思い出だから、捨てられないんだゾ!」

「律儀なことで」

この日、ひとりでゾーイのところに残ったんだけど、今世紀最大の衝撃的なことがあった。それはまた別な話ってことで。疲れるからあんまり語りたくないんだ。自分のこと話すのも恥ずかしいしな。

 

 





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